民泊新法(住宅宿泊事業法)の概要

住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)では、それぞれの立場に応じて、事業を始める前には届け出をする必要があります。

 

「住宅宿泊事業者」:民泊ホスト、大家さん

 

「住宅宿泊管理業者」:民泊運営代行会社

 

「住宅宿泊仲介業者」:民泊仲介サイト

 

民泊新法においては、それぞれの事業者に対して「届出」や「登録」など事業運営において必要となる手続き、および事業者として実施するべき「業務」の内容、そしてそれらの「監督」権限について詳しく定められています。ここでは、事業者ごとに対応するべきポイントを絞ってご紹介していきます。

民泊をはじめるには

民泊ホスト、大家さんが求められる住宅要件

民泊ホスト、大家さんの場合、住宅宿泊事業を実施することができる「住宅」に条件があります。その条件は、以下に記載した設備要件と居住要件を満たしていることが求められます。

設備要件のポイント以下の4つです。

○ポイント1

必要な設備として、「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」があることが必要です。

○ポイント2

上記の設備が必ずしも1棟の建物内に設けられている必要はありません。 例えば、お風呂が別棟にある場合でも大丈夫です。

○ポイント3

公衆浴場等による代替はできません。近隣の銭湯等でお風呂の代わりにすることは認められません。

○ポイント4

設備の機能は、ユニットバス等の様に、トイレとお風呂がある場合でも認められます。

居住要件とは 次のいずれかに該当する家屋である必要があります。

(1)「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」

   ・・・現に特定の者の生活が継続して営まれている家屋です。

(2)「入居者の募集が行われている家屋」

   ・・・住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)又は賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋です。 

(3)「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」

   ・・・生活の本拠としては使用されていないものの、その所有者等により随時居住利用されている家屋です。 当該家屋は、既存

   の家屋において、その所有者等が使用の権限を有しており、少なくとも年1回以上は使用している家屋です。例えば、年数回程度

   利用している別荘や、休日のみ生活しているセカンドハウス、転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度

   居住するために所有している空き家、相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住することを予定して

   いる空き家、生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家があります。」

住宅宿泊事業者(民泊ホスト、大家さん)の届出内容

民泊ホスト、大家さん(住宅宿泊事業者)の義務

大家さんは、民泊新法の施行後、民泊ホストは都道府県知事(保健所設置市はその首長)に対して「届出」をすることで、旅館業法の許認可がなくとも「住宅宿泊事業」、つまり民泊を運営することが可能となります。民泊ホストに対する規制の主なポイントは下記となります。

 

民泊ホスト、大家さん(住宅宿泊事業者)に必要な届出内容

民泊を運営するためには、下記内容を届け出る必要があります(下記以外の情報が必要となる可能性もあります)。

 

・商号、名称または氏名、住所(法人の場合は役員氏名)

・住宅の所在地

・営業所または事務所を設ける場合はその名称と所在地

・住宅宿泊管理業務を委託する場合は、委託先の住宅宿泊管理業者の商号など

・図面の添付

 

なお、届出自体は民泊新法の施行前でも平成30年3月15日から可能となる見込みです。ただし、その場合でも施行日において届出をしたものとみなされるために、実際の営業活動は施行後となります。

 

民泊ホスト、大家さん(住宅宿泊事業者)の業務

民泊ホストとして民泊を運営するにあたっては、下記のルールを守る必要があります。

 

・一年間の営業日数の上限は180日以内

・各部屋の床面積に応じた宿泊者数の制限、清掃など衛生管理

・非常用照明器具の設置、避難経路の表示、火災・災害時の宿泊者の安全確保

・外国人観光客向けの外国語による施設案内、交通案内

・宿泊者名簿の備え付け

・周辺地域の生活環境悪化防止のため、外国人観光客に対する外国語を用いた説明

・周辺地域の住民からの苦情、問い合わせに対する適切かつ迅速な対処

・届出住宅ごとに公衆の見えやすい場所に国が定めた様式の標識を表示

・宿泊日数の定期的な報告

最大の焦点であった営業日数上限については180日以内という形で固まりましたが、その他にも民泊ホストとして運営するにあたっては宿泊者の安全確保や周辺住民への配慮など様々な業務の遂行が求められます。

 

また、民泊ホストは、下記に該当する場合は、民泊の運営業務を住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社)に委託することが求められます。

 

・届け出た住宅の部屋数が、民泊ホストとして対応できる適切な管理数を超える場合

・届け出た住宅に宿泊者が滞在する際、不在となる場合

 

ただし、2点目のポイントについては、民泊ホストが自身の生活の拠点として使用している住宅と、民泊貸し出し用に届け出た住宅との距離や、その他の事情を勘案した結果、委託の必要がないと認められる場合は、住宅宿泊管理業者に物件を委託する義務は免れます。

民泊運営代行会社(住宅宿泊管理業者)の場合

民泊運営代行会社(住宅宿泊管理業者)の義務

続いて、民泊運営代行会社の義務についてご紹介していきます。民泊ホストからの委託を受けて民泊運営を代行する会社は、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。

 

民泊運営代行会社(住宅宿泊管理業者)の登録

住宅宿泊管理業者としての登録にあたって必要となる主な情報および手続きとしては下記が挙げられます。

 

・登録は5年ごとに更新

・登録時には登録免許税(9万円)の支払

・商号、名称または氏名、住所(法人の場合は役員氏名)

・営業所または事務所の名称および所在地

また、新法制定後は、住宅宿泊管理業者の登録簿が一般に公開されるため、民泊運営代行会社が登録をしているかどうかがすぐに分かるようになります。

 

民泊運営代行会社(住宅宿泊管理業者)の業務

住宅宿泊管理業者として登録を受けた民泊運営代行会社は、業務の遂行にあたり下記のルールを守る必要があります。

 

・名義貸しの禁止

・誇大な広告の禁止

・管理受託契約の締結時には、書面の交付による説明

・管理業務の全部の再委託の禁止

・従業員に対し、登録業者である証明書の携帯の義務づけ

・営業所または事業所ごとに国が定めた様式の標識を掲示

新法施行後は、登録を受けた民泊運営代行会社は登録済の業者であることを対外的にはっきりと示す必要があり、加えて名義貸しや全部委託といった形での運営も禁止されることになります。

 

ただ、民泊運営代行会社の場合、上記の民泊ホスト、大家さんに変わってそれなりの業務の代行を行うようになるのでは?と考えております。なぜなら、地方の民泊ホスト、大家さんの場合、アパート等を持っていても、その敷地から離れて住んでいるケースが多いと予想されますので、どうしても民泊運営代行会社に委託をしないと始められないケースが多いのではないか?と考えています。

 

次に、平成29年12月に発表された住宅宿泊事業法施工要領(ガイドライン)によれば、法第7条に規定する措置の実施にあたっては、「必要な事項が記載された書面を居室に備え付けることによるほか、タブレット端末への表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間必要に応じて閲覧できる方法によることが望ましい。特に、災害時等の通報連絡先においては、緊急時にすみやかに確認することが可能なものを備え付けておくものとする。」となっております。

 

つまり、それらの建物の避難経路や利用案内への対応等が必要になりますが、日本語のみならず、外国語表示が必要になるということです。それらの整備を知識の無い民泊ホストや大家さんが整備をするのは、できない、もしくは相当の苦労を要すると思います。

 

また、消防法等への対応や防犯カメラの設置等、工事等も発生する可能性もあります。そこには、民泊運営代行会社として、ノウハウを提供する必要があるのではないか?と考えております。

住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト)の場合

住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト)の義務

最後に、AirbnbやHome Awayといった民泊仲介サイトの運営企業に対する規制についてもご紹介していきます。民泊新法下においてはこれらの企業は「住宅宿泊仲介業者」とされ、運営にあたっては観光庁長官の登録を受ける必要があります。

 

住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト)の登録

住宅宿泊仲介業者としての登録にあたって必要となる主な情報および手続きとしては下記が挙げられます。

 

・登録は5年ごとに更新

・登録時には登録免許税(9万円)の支払

・商号、名称または氏名、住所(法人の場合は役員氏名)

・営業所または事務所の名称および所在地

民泊仲介サイトは、民泊運営代行会社と同様に登録が求められます。今後、民泊新法の施行に伴い海外勢のみならず国内企業発の民泊仲介サイトもさらに増加していくことが予想されますが、それらの仲介サイト運営会社は全て登録を受ける必要があります。

 

住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト)の業務

住宅宿泊仲介業者として登録を受けた民泊仲介サイトは、業務の遂行にあたり下記のルールを守る必要があります。

 

・名義貸しの禁止

・宿泊者との宿泊契約「住宅宿泊仲介契約」の締結に関し、住宅宿泊仲介業約款を定め、実施前に観光庁長官へ届出が必要(観光庁が標準住宅宿泊仲介業約款を定めて公示した場合、同一のものを使用する場合は届出不要)

・民泊ゲストおよびホストから受ける手数料の公示

・宿泊者との宿泊契約締結時、書面の交付による説明

・営業所または事業所ごとに国が定めた様式の標識を掲示

なお、民泊新法の制定に向けた動きを受けて、民泊仲介サイト最大手のAirbnbでは、既に民泊新法施行後のルールとなる年間営業日数180日以内を民泊ホストに遵守させることを目的として、宿泊日数が180日を超えたリスティングは表示されないようシステムで自動制御する方針を固めています。

民泊の立場ごとに説明します

大家さん(住宅宿泊事業者の届出)

民泊をしてみたいと思っている方、大家さん、民泊ホストの方向けです。

民泊を始める上でしなければならないこと、知っておきたいことなどを解説しております。詳しくはこちらをご覧下さい。

住宅を管理する人(住宅宿泊管理業者)

住宅宿泊管理業者の方、民泊運営代行会社向けです。

住宅宿泊管理業者の登録に必要な手続きや義務、注意すべき点などについても記載しております。

詳しくはこちらをご覧下さい。

民泊を紹介する人(住宅宿泊仲介業者)

住宅宿泊仲介業者の方、民泊仲介サイト向けです。

住宅宿泊仲介業者の登録に必要な手続きや義務についても触れております。

詳しくはこちらをご覧下さい。